公開日: 2020年12月10日

不動産の相続登記とは?登記手続きの必要性・方法・費用などを解説

不動産 相続登記

  • 相続登記ってそもそも何?
  • 不動産を相続したら登記しないといけないの?
  • 相続登記はどうやってすればいい?

など、相続登記の疑問について説明いたします。

1.不動産の相続登記とは

不動産の相続登記とは、被相続人(相続される人・不動産の所有者)が死亡した場合に、相続した不動産について、被相続人から相続人に名義を移転する手続きのことを言います。

相続登記手続は司法書士が専門に取り扱っていることが多いですが、弁護士が取り扱っている場合もあります。

2.相続登記はなぜ必要なのか

2-1.2024年4月1日から相続登記が義務化されるから

相続登記が義務化されることについて、お聞き及びのある方は多いと思います。不動産登記法の改正により、相続登記は2024年の4月1日から義務化されます。

義務化されると、「相続開始及び所有権の取得を知った日から3年以内」に正当な理由なく相続登記をしなければ、10万円以下の過料を請求される可能性があります。

さらに、改正前に発生した相続にもこの改正は適用されることになります。相続した不動産を登記していない方は、「相続開始及び所有権の取得を知った日」または、改正施行日である2024年4月1日のいずれか遅い日から3年以内に登記申請義務を負うため、多くの方は、施行日から3年以内に登記する必要が出てくるでしょう。

早めに対応しておくに越したことはありません。

2-2. 不動産の相続を第三者に対抗するため

法定相続分を超える部分については相続登記がなければ、相続不動産に権利を取得した第三者にその権利を対抗することができません。

例えば、被相続人の配偶者と子である2人の兄弟が相続した不動産について、遺産分割協議で兄が不動産を取得したことになったにも関わらず相続登記を怠っていると、弟が不動産の所有権を第三者に譲渡して、その第三者と兄のどちらが所有権を取得するかといった問題が発生することがあります。

この点について民法は、相続による不動産の所有権移転のうち、法定相続分を超える部分を第三者に対抗するためには、所有権移転登記を経由しなければならないと定めています(民法899条の2第1項参照)。

つまり、相続登記がなければ、第三者が兄の法定相続分を超える部分の不動産の所有権を取得することとなってしまうのです。

このように法律で定められた理由は、第三者は譲渡人である相続人が真の所有者であると信用して取引したにもかかわらず、後で、別の相続人から所有権を主張されることになり、第三者に不測の損害が発生してしまうおそれがあるからです。

遺言や遺産分割協議により不動産を取得した相続人にはこのようなリスクがあり、速やかに所有権移転登記手続きを行うべきであると考えます。

ただし、法定相続分を超えずに不動産を相続しても、不動産が被相続人の名義のままでは、第三者からすると所有者が不明確であることに変わりはありません。ですから、不動産の相続の場合は、法定相続分を超えていなくても、原則として相続登記を経る必要があるでしょう。

2-3. 相続登記を怠った場合の弊害

不動産の相続登記を怠ると他にも様々な弊害が発生します。

共有者状態では不動産の賃貸や売却が難しくなる

例えば、前述した事例で、譲受人である第三者が先に登記を備えると、不動産は兄が法定相続分の四分の一の持分しか取得することができず、譲受人が残りの四分の三の持分を共有する状態となり、二人が合意に至らなければ、不動産を賃貸することも、売却することもできません。

共有物を貸す場合は共有者の過半数の同意が必要であり、共有物を売却する場合は共有者全員の同意が必要だからです。

相続人間の権利関係が曖昧化・複雑化してトラブルの原因となる

相続登記をしなければ、相続人間で権利関係が曖昧になるため、後日、不動産の所有権をめぐり争いが発生する場合もあります。

また、相続登記をせずに長期間放置したままで、その相続人にさらに相続が発生すると、誰が不動産の所有者であるかが分からなくなるという問題も発生します。

登記名義を現在の所有者にしておかないと賃貸・売却が難しい

例えば、相続した不動産の売買や賃貸をすることになった場合、相続登記をしていないとデメリットが発生する可能性があります。通常、不動産の登記名義人になっていない方からは不動産を購入しませんし、不動産を賃貸する場合にも、登記上の所有者ではない方からは賃借しないでしょう。

このように、不動産を相続した場合は、速やかに、被相続人から相続人への相続登記することをおすすめします。

3.相続登記を行うにはどうすればいい?

3-1. 法務局で手続きを行う

相続登記を取り扱うのは法務局です。不動産の所在地を管轄する法務局で相続登記手続きを行います。

【参考】法務局ホームページ:管轄のご案内

3-2. 相続登記の必要書類

相続登記の必要書類は、法定相続分のとおりに相続した場合と、遺産分割協議によって相続した場合、遺言書によって相続した場合とで異なります。

①法定相続分のとおりに相続した場合

  1. 登記申請書
  2. 添付書類として相続が発生したこと及び相続人を特定するため書類として次のものが必要となります。
    被相続人(死亡した方)の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本等
    相続人となる方々の現在の戸籍謄本
    相続人全員の住民票の写し
    委任状(代理人が申請する場合)
  3. 登録免許税(通常は収入印紙で納付) 通常は固定資産評価証明書が必要となります。

②遺産分割協議によって相続した場合

  1. 登記申請書
  2. 添付書類として相続が発生したこと及び相続人を特定するための書類として次のものが必要となります。
    被相続人(死亡した方)の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本等
    相続人となる方々の現在の戸籍謄本
    遺産分割協議書
    登記申請人以外の相続人の印鑑証明書(※)(作成後3か月以内のものであることを要しません)
    遺産分割協議によって不動産を相続した相続人の住民票の写し
    委任状(代理人が申請する場合)
  3. 登録免許税(通常は収入印紙で納付) 通常は固定資産評価証明書が必要となります。

※ 登記申請人を含め相続人全員の印鑑証明書を添付しても構いません。

③ 遺産分割協議によって相続した場合

  1. 登記申請書
  2. 添付書類として相続が発生したこと及び相続人を特定するため書類として次のものが必要となります。
    被相続人(死亡した方)の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本等
    相続人となる方々の現在の戸籍謄本
    遺言書
    遺言によって不動産を相続した相続人の住民票の写し
    委任状(代理人が申請する場合)
  3. 登録免許税(通常は収入印紙で納付) 通常は固定資産評価証明書が必要となります。

4.相続登記にかかる費用は?

4-1. 登録免許税

不動産の価額の1000分の4(0.4%)の登録免許税を納付する必要があります。不動産の価額は固定資産税評価額が基準になります。

【参考】国税庁ホームページ:登録免許税の税額表

4-2. 司法書士などに依頼する場合は依頼費用も必要

登記手続きは司法書士に代行してもらうとスムーズです。相続登記に必要な戸籍謄本は被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本が必要となり、その取り寄せが困難で複雑な事例が多いからです。また、戸籍謄本を取得する過程で新たな相続人が分かる場合もあります。

相続登記の手続は弁護士経由で依頼することも可能です。費用は、登録免許税の費用とは別に、不動産の価格や登記件数にもよりますが、4~5万円以上かかる場合が多いと思います。

5.相続登記はいつまでに行えばいい?

前述した通り、相続登記は、2024年4月1日から義務化します。不動産登記法改正前に発生した相続にもこれ以降、登記申請義務が課せられます。

そのため相続登記は、遺産分割協議が完了したら速やかに行っておくべきでしょう。

6.相続登記は自分で行うこともできる?

相続登記手続は、必ずしも司法書士に委任して行う必要はなく、自分で行うことも可能です。事前に法務局で相談に乗ってもらい、登記手続を進めるのも一つの方法です。

しかし、被相続人が生まれてから亡くなるまでに戸籍を転々としており、取り寄せが難しかったり、相続人の調査で時間がかかったりする場合もあります。中には被相続人が海外に行き戸籍の取り寄せが困難であるケースや、相続人が行方不明のケースもあります。

ですから、相続を弁護士に依頼している場合には、弁護士に対応を依頼するか、弁護士に司法書士を紹介してもらう方がスムーズだと思います。相続登記の依頼は、それほど大きく費用がかさむわけではなく、添付書類の収集など面倒な作業も代行してもらえるので、依頼をした方がいい場合も多いと思います。

7.相続登記についてのよくある質問(FAQ)

相続登記後に相続放棄をすることはできる?

相続登記後に、被相続人に多額の借金があることが発覚し、相続放棄をしたい場合もあるでしょう。こうしたケースでは、相続放棄が認められることがあります。

ただし、一度相続登記をしてしまうと、相続人の「気が変わった」程度では、相続放棄は認められません。相続登記は、本来「処分行為」として法定単純承認に当たるからです。

相続放棄は、一度却下されてしまうと、高等裁判所に不服申し立て(即時抗告)をして審理してもらうことは可能ですが、再度申述することはできません。相続に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

ちなみに、法定相続人が全員相続放棄をしてしまうと、次順位の相続人が相続人となりますが、被相続人に莫大な借金があれば、こうした相続人も相続放棄をする可能性が大です。こうした経緯で相続人が誰もいなくなると、最終的に不動産は国庫に帰属することになります。

相続登記に協力してくれない相続人がいる場合はどうすればいい?

遺産分割協議によって不動産を単独で相続すると、直接被相続人から不動産を取得した相続人1人への相続登記を申請することができます。ただし、その場合でも、相続人全員の印鑑証明書が提出書類となるため、協力してくれない相続人がいると事実上、相続登記ができなくなってしまいます。

しかしこの場合であっても、法定相続分により相続人全員で不動産を共有する登記は、「保存行為」として相続人の1人から申請することができ、遺産分割協議書や印鑑証明書の提出も不要です。

この登記をした後には、登記に協力しない相続人に対して、遺産分割を原因とする共有持分の全部移転登記手続請求訴訟を提起することができます。

その他にも、登記に協力しない相続人がいる場合には、所有権の確認訴訟を提起する方法や、遺産分割協議書の真否確認の訴えを提起する方法が考えられます。

いずれの場合も、勝訴の確定判決を得れば、相続登記が可能になります。

相続登記に協力してくれない相続人がいる場合には、このように最終的に訴訟を提起する必要があり、どのような方法を採用するかは、ケースバイケースで異なります。

お早めに弁護士に相談することをお勧めします。

8.まとめ

このように、不動産を相続する場合には、相続登記をする必要があります。相続登記は専門家に依頼せずに自分で行うことも可能ですが、書類の取り寄せや、相続人の調査が必要な場合などは、弁護士や司法書士に依頼した方がスムーズです。

当事務所でも提携している司法書士がおりますので、不動産の相続については、登記手続も含めてご依頼をいただけます。

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