公開日: 2021年06月11日

立ち退きについて弁護士に相談・依頼するメリット

賃借人の賃料不払い、老朽化に伴う建て替え、自分や家族が使用する必要がある等、賃貸物件のオーナーが立ち退き交渉を行いたい場合、どうすればよいのでしょうか。

借地借家の立ち退きの問題は、立退料をめぐり裁判になることも多く、できる限り、スムーズに立ち退き交渉を進め、立ち退きに伴う支出や賃料収入の機会損失を抑えるのが望ましいと言えます。

そのため、立ち退きをめぐってトラブルが生じた場合には、弁護士に相談することを強くお勧めします

このコラムでは、こうした立ち退きに関して、弁護士に相談・依頼する場合のメリットや弁護士の選び方、相談のポイント、費用などを解説いたします。

1.立ち退きについて弁護士に相談・依頼するメリット

1-1. 「正当の事由」を踏まえて妥当な立ち退き料を検討できる

更新拒絶や解約には正当の事由が必要

借地・借家の場合、契約期間が満了したとしても、直ちに賃借人に退去を求めることはできません。

契約期間が満了し、更新したくない時には、借地の場合は、期間満了時に「更新しません」と遅滞なく異議を述べる必要があり、借家の場合は、期間満了の1年前から6か月までの間に更新しない旨通知をし、期間満了後も賃借人が使用継続していれば、「更新しません」と遅滞なく異議を述べる必要があります。

さらに、借地・借家いずれの場合にも更新に異議を述べるだけでは足りず、更新拒絶や解約申入れをするにあたって「正当の事由」が必要とされています。

このように賃貸人から賃借人に対する退去は法律上制限されており、賃借人に長期の賃料不払いなどの契約違反がない限り、退去を求めることは難しいのです。

正当の事由の判断と弁護士の役割

「正当の事由」が認められるためには、借地の場合にはその土地、借家の場合にはその建物を賃貸人が使用しなければならない事情等が必要です。しかし、土地・建物を使用しなければならない必要性が低いため「正当の事由」が弱い場合であっても、立退料の申出があれば「正当の事由」を補完する要素になります。

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立退料は「正当の事由」の強弱や、他の様々な事情で適切妥当な金額が決められるものであり、事案ごとに大きく異なります。しかし、ある程度の相場観はあります。

そこで立退料については、立退きについて経験豊富な弁護士に、妥当な金額や、どのような方法で賃借人と交渉していけばよいの等を相談するとよいと思います。

もちろん代理人弁護士を依頼すれば、立退きのみならず立退料の金額自体についても、弁護士が代わって交渉することが可能です。

借地借家の立ち退きの問題は、立退料をめぐり裁判になることも多く、できる限り、スムーズに立ち退き交渉を進め、立ち退きに伴う支出や賃料収入の機会損失を抑えるのが望ましいと考えます。そのためにも、弁護士の役割は大きいと言えるでしょう。

1-2. 滞納している賃料を支払ってもらえる場合もある

賃料不払いがある賃借人は一般的に資力が乏しいため、立ち退き費用すら捻出できず、未払賃料の支払いはさらに困難なことが多いといえます。

しかし弁護士であれば、賃貸人・賃借人の状況やこれまでの経緯などを考慮し、そのときの状況に応じた適切な対処方法を検討することが期待でき、場合によっては、賃料を滞納していても賃料の回収が可能なことがあります。

1-3. 自分自身の負担が軽くなり、訴訟にも対応しやすい

弁護士に依頼せず、賃貸人が直接賃借人との立ち退き交渉を行うことは可能ですが、一般的にはストレスになることが多いと思います。

賃借人が簡単に明渡しに応じるケースは現実には少なく、賃借人が立ち退きに簡単には応じずに立退料を巡って揉めることも多いため、賃貸人はどうすることもできず、長期間この問題から悩まされるケースもあるからです。

一方で、弁護士に依頼して代理人として対処してもらえば、こうしたストレスは軽減されますし、適切な助言を通じた解決までの道筋をつけることもできます。

また明け渡しに関する訴訟になったとしても、弁護士が事情をお伺いし、第三者的に事情を整理しながら訴訟に対応することも可能です。

もし明渡請求訴訟や強制執行を行うこととなっても、当初から事情を知っている弁護士であれば、事情を把握しているためスムーズに対応できると考えます。

2.立ち退きに関する弁護士の選び方

2-1. 不動産取引に精通し、経験豊富か

弁護士が多数いる中でその選定はなかなか難しいのですが、賃貸借にかかる不動産取引の経験や実績が豊富な弁護士であれば、立ち退き交渉も安心して任せられます。

気になった弁護士事務所をいくつか選定し、事務所のサイト等で、解決実績や取扱分野などから不動産に関するトラブルを扱っているか、実績が豊富かを見て決めるのも一つの方法かと存じます。

2-2. 相談したときの対応や説明の丁寧さ

借地借家からの地代や賃料は賃貸人としては貴重な収入源になり、特に中小企業にとって未払の状況が継続するのはまさに死活問題と言えます。

また、立ち退き交渉をする場合、立退料が高額にならないか不安になっている方も多いと思います。

こうした賃貸人の不安と今後の見通しについて、根拠とともに丁寧に説明してくれる弁護士に依頼するとよいと考えます。

相談時には、ご自身の不安や心配事をしっかり伝え、それに対する弁護士の説明に納得できるか、立ち退きの問題解決に向けて安心して委ねることができるか等をよく考えてみましょう。

3.立ち退きを弁護士に相談する際のポイント

3-1. 関係する書類は相談までにまとめて準備しておく

立ち退きや正当の事由の判断、立ち退き料の金額等については、 賃貸借契約書や重要事項説明書の内容次第で判断が変わることもあります。

そのため、賃貸借契約書や重要事項説明書など、立ち退きを求める物件と契約に関する情報は、事前にまとめておくとスムーズに相談することができます。

その他に相談の際、弁護士から指示のあったものもなるべく早期に準備するのが望ましいと思います。

3-2. 賃貸借契約の経緯をまとめておく

立ち退きは、それまでの賃貸借契約の経緯や、賃貸人・賃借人の事情などが重要になるため、経緯を振り返ってまとめ、それに関連しそうな資料を用意しておくのがよいと思います。

特に契約期間が長いと、昔のことはなかなか思い出せないため、相談までにメモ書き程度でも作成しておくと、短い相談時間を効率的に使えます。

3-3. できれば早いうちに相談する

立ち退き交渉でトラブルになってから相談するよりは、最初から弁護士に相談して、戦略的な見通しとともに行動したほうがいいでしょう。

長期化すればするほど、賃料収入や建て替えの収益計画等に大きく影響し、弁護士費用どころではない損失になることも多くなってしまいます。

揉めそうだなと思っても自分で対応する賃貸人もいらっしゃいますが、早期解決のためには一度は弁護士に相談して方向性だけでも整理してもらうとよいと思います。

4.立ち退き交渉等を弁護士に依頼する場合の費用

4-1. 相談料・着手金・報酬金

一般的に相談料・着手金・報酬金の3つに分かれています。

相談料は時間制で30分5,000円程度が多いです。

着手金は依頼する場合に最初に発生するもので、依頼の成否に関わらず必要になります。

報酬金は、事件が終了して解決した場合の費用であり、事件の成功度合に応じて決まります。

4-2. 立ち退きに関する費用

弁護士費用は、現在弁護士が自由に定められることになっており、各事務所で異なっていますが、日弁連の旧報酬基準に従って報酬を定めている事務所も多いように思われます。

立ち退きについては、 あたらし法律事務所の費用も旧日弁連の費用に準じて定めています。

5.立ち退きについてのよくある質問(FAQ)

立退料の相場はいくらくらい?

立退料の相場は、賃貸住宅の場合は、40万~80万円程度、賃貸アパートなどの場合は、40~60万円程度とされています。

現在の家賃と新たな家賃の差額1年~3年分と移転のための引っ越し代、不動産会社への仲介手数料・礼金などが主な立退料の内訳となります。

ただしあくまで相場は目安であり、個別の事情により大きく変わることがあることをご承知おきください。

立ち退きを依頼する弁護士の選びのポイントは?

立ち退きを依頼する弁護士は、次のポイントを考慮して選ぶとよいでしょう。

  • 不動産取引の経験や実績が豊富か
  • 相談したときの対応や説明は丁寧か

弁護士にも得意な分野・不得意な分野があり、不動産の取引経験も弁護士によって大きく異なります。

事務所サイトや知り合いからの口コミなどにより、不動産取引やトラブルに精通しているか事前に情報収集することが重要です。

弁護士に立ち退きを相談する際のポイントは?

弁護士に立ち退きを相談する際には、事前に賃貸借契約書や重要事項説明書など、契約に関する情報を事前にまとめておきましょう。

また、賃貸借契約の経緯をメモ書き程度にまとめておくと、相談がスムーズです。

早期解決のためには、トラブルが大きくなる前に、早めに弁護士相談しましょう。

6.まとめ

立ち退きは賃貸物件のオーナーにとっては身近な問題ではありますが、慎重な対応が必要で、不動産トラブルの中でも適切な対処が難しいと考えます。

お一人で悩むより、経験豊富な弁護士に相談して戦略的な見通しを立てるか、依頼して対応をまとめて任せるのがおすすめです。

あたらし法律事務所は個人やテナントとの立ち退き交渉の経験も豊富ですので、安心してご相談いただけます。

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