公開日:2021年05月20日

遺留分侵害額請求されたらどうする?重要な確認ポイントと対処方法

遺留分

このコラムでは

  • 遺留分を請求された場合にどのようにすれば良いのか
  • 無視できるのか
  • 遺留分を請求された場合に必ず払わないといけないのか
  • 払えないときはどうすれば良いか

などにについて説明いたします。

1.遺留分侵害額請求とは

1-1. 遺留分の概要

遺留分は兄弟姉妹以外の相続人に保障された最低限の遺産の取得分のことをいいます。

すなわち、遺留分は、被相続人の配偶者、子(子の代襲相続人も含む)、直系尊属(親など)に保障された権利であり、兄弟姉妹には遺留分はありません。

また、遺留分は直系尊属のみが相続人の場合は法定相続分の3分の1が遺留分と定められており、それ以外の場合は法定相続分の2分の1が遺留分となります。

ですから、遺贈(遺言による贈与)や生前贈与により、遺留分に満たない財産しか相続できなかった者は、遺留分権利者として、遺留分を侵害する遺贈・生前贈与を受けた人(その受遺者・受贈者及びその包括承継人も含みます)に対して、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求できます。

なお、遺留分を請求できる人は、遺留分を有する相続人から更に遺留分を相続した人やその譲受人も含まれます。

なお、民法改正により、2019年7月1日以降に亡くなった方の相続については遺留分侵害額請求、同年6月30日までに亡くなった方の相続については遺留分減殺請求をすることになります。

前者は金銭の支払いを請求する権利であるのに対し、後者は、遺贈や贈与の目的物について、遺留分を侵害する限度で返還請求する権利です(財産そのものを返す「現物返還」が原則ですが、その財産の評価額に相当する金銭で支払う「価額弁償」も認められています)。

1-2. 遺留分侵害額請求を無視してはいけない

本コラムの2以下で説明するチェックポイントをクリアする正当な請求である限り、遺留分侵害額請求をそのまま放置してはいけません。

遺留分侵害額請求は金銭の支払を請求する権利ですので、通常の金銭請求と同じく、法定利率(現在は年3%)による遅延損害金が発生します。

具体的には、遺留分侵害額請求として金銭の請求が届いた日の翌日か遅延損害金が発生します。

ですから、遺留分侵害額請求がなされた場合には、それを無視していると金額が膨らんでいくので注意が必要です。

また、遺留分侵害額請求は、そのまま放置しておくと、遺留分権利者が家庭裁判所に調停申立をすることがあり、調停が成立しないと、地方裁判所あるいは簡易裁判所に訴訟を提起する可能性があります。

遺留分侵害額請求をされた場合には、早い段階で対処することが大切です。

2.遺留分侵害額請求をされたときのチェックポイント

2-1. 遺留分権利者からの請求かどうか

遺留分侵害額請求をされたとき、まずは遺留分侵害額を請求している当事者が遺留分を請求できる者であるかどうかをチェックする必要があります。

遺留分を有するのは、前述のとおり兄弟姉妹以外の相続人になります(民法1042条1項)。

また、実際に相続人となる者でなければ遺留分権者ではありません。

例えば子が相続人である場合には直系尊属は相続人ではなく、遺留分権利者ではありません。

また子や配偶者であっても相続放棄をすれば、遺留分権利者ではありません。

兄弟の代襲相続人(兄弟が死亡している場合の兄弟の子)についても、兄弟と同様に遺留分権利者にはなりませんが、子の代襲相続人(子が死亡している場合の孫)については遺留分権利者となります。

なお、遺留分の権利を有する相続人から、遺留分を相続した人やその譲受人も、遺留分権利者になります。

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2-2. 遺留分侵害額請求の消滅時効が完成しているかどうか

遺留分侵害額請求には期間制限があり、相続開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間で時効消滅し、相続開始から10年間で消滅します(民法1048条)。

従いまして、遺留分侵害額請求をされた時に既に1年の時効が完成しているときは、時効を援用することで支払う必要はなくなります(もっとも任意で支払うことも可能です)。

ちなみに、時効の援用とは、時効の効果を確定的に発生させる意思表示です。

時効は「時効を援用する」と相手方に意思表示をしなければ、裁判所は時効消滅していないものとして判断することになります。

通常は、配達証明付きの内容証明郵便などを用いて確実に相手方に届いたことが分かる方法で意思表示を行います。

なお、10年は通常「除斥期間」と言われています。相続開始から10年経過すれば、時効とは異なり、時効を援用しなくても遺留分侵害額請求権が消滅することになります。

2-3. 遺留分の侵害があるか、ある場合は侵害額がいくらか

遺留分侵害額請求は金額を決めなくてもできるため、遺留分侵害額請求の通知書に金額の記載がないこともあります。

そのため、遺留分侵害額請求がなされた場合、金額の記載の有無にとらわれず、実際に侵害があるかどうかを計算する必要があります。

遺留分自体は、前述のとおり相続人が直系尊属だけの場合には法定相続分の1/3、それ以外の場合には法定相続分の1/2と定められていますが、具体的な金額の算出は遺産の価額評価に贈与した財産の価額を加え、債務を控除して算定することになります。

相続人に対する贈与は原則として相続開始前10年間、相続人以外の贈与については相続開始前1年間にしたものを加算することになりますが、遺留分侵害額を算出するにあたっては、相続財産や生前贈与の価額評価をする必要があり、また相手方から寄与分が主張される場合がありますので、計算が複雑になる場合もあります。

また遺留分を侵害している人が複数いる場合や遺留分を侵害している贈与が複数ある場合等には、遺留分侵害額請求を行う順序が法律で決められています。

このように、遺留分侵害額請求を受けた場合にはいくつかのチェックポイントがありますが、対応が複雑になるケースもあります。従いまして、実際に遺留分の侵害があるか否かは、弁護士に相談するのがおすすめです。

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3.遺留分の支払いが難しい場合の対処法

2019年7月1日以降に亡くなった方の相続については、遺留分は金銭で支払うのが原則になります。

被相続人から受けた遺贈や生前贈与が換価困難な不動産や動産である場合や、被相続人から受けた金銭を既に費消しており、直ちに支払うことが難しい場合は、裁判所に支払い期限を延ばしてもらう(相当の期限を許与)申立てをすることができます(民法1047条5項)。

4.まとめ

遺留分侵害額請求をされた場合、前述のとおりいくつかチェックポイントを説明しました。

ただし、遺留分の侵害が実際にあるかどうか、侵害があったとしてその侵害額が適切か否かは考慮要素が多く、また、請求を受けた側の対応も状況によって大きく変わってきます。

従いまして、遺留分を請求されたら、まずは一度弁護士に相談して状況を整理してもらうことをおすすめします。

当事務所でも遺留分侵害額請求を多数経験しておりますので、ご相談いただければ幸いです。

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