離婚時の不動産の財産分与とローン支払い方法
離婚をする際には、夫婦の財産を清算する目的で「財産分与」が行われます。 夫婦の財産が現金や預貯金だけであれば特に複雑…[続きを読む]
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近年、結婚生活20年以上の夫婦による「熟年離婚」が増加しています。
子どもの独立や定年退職などをきっかけに離婚を選ぶケースも多く、40代後半から60代の離婚は珍しくありません。
しかし、熟年離婚では長年の結婚生活で築いた財産が多くなる傾向にあり、「どの財産をどう分けるか」が大きな課題となります。
預貯金や自宅だけでなく、退職金や年金といった老後資金も分与の対象になるため、慎重な対応が必要です。
本記事では、熟年離婚での財産分与や年金分割の仕組み、注意点をわかりやすく解説します。
目次
熟年離婚では、長年の結婚生活を経て築かれた財産をどのように分けるかが重要なポイントです。
婚姻期間が20年、30年と長くなるほど、預貯金や自宅、退職金、年金などの財産総額が大きくなりやすく、「どの財産が分与の対象になるのか」「どのように計算するのか」を正確に理解しておくことが欠かせません。
以下では、熟年離婚における財産分与の基本的な考え方と注意点を説明します。
財産分与とは、結婚生活の中で夫婦が協力して築いた財産を、離婚時に公平に分け合う制度です。
夫婦の収入が一方に偏っていても、家庭を支えた貢献(家事・育児・内助など)は経済活動と同等に評価されます。そのため、専業主婦やパート勤務であっても、原則としては、夫と同じ割合で財産分与を受けることができます。
特に、熟年離婚の場合、夫婦の共有財産が多くなる傾向にあるため、正確な財産調査が必要です。財産の全体像を把握できていないまま話し合いを進めると、どちらかが不利益を被るおそれもあるため注意しましょう。
財産分与の対象になるのは、婚姻期間中に築かれた「共有財産」です。
具体的には以下のようなものが含まれます。
これに対して、結婚前から保有していた財産や、相続・贈与によって取得した財産は「特有財産」として分与の対象外になります。
つまり、共有財産と特有財産の区別のポイントは、婚姻期間中に夫婦の協力によって築かれた財産であるかどうかという点です。
特に退職金は、熟年離婚で特にトラブルになりやすい項目です。
離婚時点でまだ支給を受けていない場合でも、支給が確実に見込まれる退職金のうち、婚姻期間に対応する部分は財産分与の対象になります。
たとえば、勤務期間30年のうち20年間が婚姻期間だった場合、そのうちの3分の2に相当する退職金が財産分与の対象となります。
退職金は金額が大きいため、分与方法によっては老後の生活資金に大きな影響を与えます。
離婚後に後悔しないためにも、弁護士に相談して正しい評価と分与割合を確認することが重要です。
財産分与の請求には、離婚成立から2年以内という時効があります。この期間を過ぎると、原則として財産分与を請求することができなくなりますので注意が必要です。
協議離婚の場合、「離婚届を出した後にゆっくり話し合えばいい」と考える方も多いですが、2年という期間はあっという間に過ぎてしまいますので、早めに行動するようにしましょう。
熟年離婚では、「年金分割」も非常に重要な制度です。
離婚後の生活資金は、財産分与だけでなく年金によっても大きく左右されます。特に、専業主婦やパート勤務などで厚生年金に加入していなかった方にとって、配偶者の年金を分けてもらえるかどうかは老後の生活に直結する問題です。
以下では、年金分割の仕組みや種類、注意すべき点を説明します。
年金分割とは、婚姻期間中に夫婦の一方が納めた厚生年金や共済年金の保険料記録を、離婚時にもう一方の配偶者にも分ける制度です。
この制度を利用すれば、専業主婦や収入が少なかった妻でも、離婚後に自分名義で年金を受け取れるようになります。
婚姻期間が長いほど対象となる年金の積立期間が増えるため、年金分割によって受け取れる金額も多くなる傾向があります。
特に、20年・30年以上の婚姻期間がある熟年離婚では、妻側の将来の年金受給額に大きな差が出る場合があります。
たとえば、長期間専業主婦だった方は、年金分割を行わなければ老後に月数万円しか年金を受け取れないケースもありますが、年金分割を行うことで安定した老後生活資金を確保できる可能性があります。
なお、年金分割の請求は離婚後2年以内に行う必要があるため、財産分与と同様に早めの行動が大切です。
年金分割の対象になるのは、以下の2種類の年金です。
婚姻期間中にこれらの年金に加入していた期間がある場合、その期間分の年金記録を分割の対象とできます。
これに対して、自営業者が加入する国民年金は、分割の対象外となりますので注意が必要です。
年金分割には「合意分割」と「3号分割」の2種類があります。
婚姻期間や被保険者の種類によって、どちらの制度を利用できるかが異なります。
合意分割とは、婚姻期間中の厚生年金の報酬比例部分を、夫婦の合意または裁判所の判断で分割する方法です。
分割割合は最大で2分の1までで、話し合いで決められない場合は、家庭裁判所に申し立てて決定してもらいます。
合意分割を行うには、まず年金事務所で「年金分割のための情報通知書」を取得し、夫婦それぞれの年金記録を確認します。
3号分割とは、2008年4月以降の婚姻期間中に第3号被保険者(専業主婦など)だった期間について、自動的に2分の1ずつ分けられる制度です。
夫婦の合意がなくても請求でき、離婚後に自分で手続きを行えば年金を分割してもらえます。
ただし、3号分割の対象となるのは2008年4月以降の期間のみであり、それ以前の記録については合意分割が必要になります。
そのため、長期間の婚姻(20年・30年など)では両制度を併用するケースが多いです。
婚姻期間が20年・30年を超える熟年離婚では、財産分与や年金分割の影響が大きくなります。夫婦で築いてきた財産や将来受け取る年金が多い分、分け方次第で老後の生活設計が大きく変わるため、離婚のタイミングと手続きの進め方には特に注意が必要です。
以下では、婚姻期間20年・30年を超える熟年離婚における具体的な注意点を説明します。
婚姻期間が長くなると、夫婦で積み上げた資産が多くなりがちです。
たとえば、預貯金・退職金・自宅などの不動産・株式・投資信託などの金融資産などが複数存在するケースも少なくありません。
特に、定年退職を控える時期の離婚では、退職金をめぐってトラブルが生じることもあります。退職金は、将来の生活資金でもあるため、分与の範囲や割合を慎重に判断することが重要です。
また、婚姻期間中に夫が会社員や公務員として長く勤めていた場合、厚生年金・共済年金の積立額も大きくなります。そのため、年金分割を行うことで妻側の将来受給額も大きく変わり、老後の生活にゆとりをもたらす可能性があります。
離婚のタイミングも、熟年離婚では慎重に判断しなければなりません。
たとえば、夫が定年退職して退職金を受け取る前に離婚する場合、退職金がまだ支給されていないため、「退職金の一部を財産分与として請求できるか」が争点になることがあります。
一方で、退職後に離婚する場合は、実際の退職金額が確定しているため、分与額の計算がしやすいという利点もありますが、受け取った退職金をすでに使い込まれていると、分与請求が難しくなるケースもあるため注意が必要です。
また、年金分割の観点から見ると、離婚時点での年金加入期間が長いほど分割対象も増えるため、「いつ離婚するか」で将来の年金受給額が変わることもあります。
そのため、財産分与と年金分割の両面から離婚時期を見極めることが、老後資金を確保するうえでの鍵になります。
離婚を急いで進めてしまうと、「本来もらえるはずの財産や年金を請求できなかった」「老後の生活費が足りなくなった」と後悔するケースも少なくありません。
このようなトラブルを防ぐためにも、離婚前の早い段階で弁護士に相談することが大切です。
弁護士は、預貯金・不動産・退職金・株式などの財産を整理し、共有財産と特有財産を正確に仕分けできます。
「どこまでが分与対象になるのか」「いくら請求できるのか」が明確になることで、適正な離婚条件を導き出せるのです。
離婚をめぐる金銭交渉は、感情的な対立に発展しやすいものです。
弁護士が代理人として交渉や調停に対応することで、冷静かつ法的根拠に基づいた話し合いが可能になります。相手のペースに流されず、公平な条件で合意を得るための交渉力が大きな支えとなります。
年金分割の情報通知書の取得、必要書類の収集、合意書や調停調書案の作成など、手続きは煩雑です。
弁護士に依頼すれば、手続き漏れや時効のトラブルを防ぎ、確実に権利を行使できるようサポートしてもらえます。
熟年離婚の最大の課題は、離婚後の生活費・老後資金をどのように確保するかという点です。
現役世代の離婚と異なり、再就職や収入増が難しい年齢での離婚では、財産分与や年金分割の結果がそのまま老後の生活水準に直結します。
特に、専業主婦やパート勤務だった方は、離婚後に年金受給までの生活費をどう確保するかを具体的に考えておく必要があります。
老後資金の見通しを立てるには、財産分与や年金だけでなく、将来の支出も含めてシミュレーションする必要があるのです。
弁護士に相談すれば、離婚後の生活費・住居・医療費など、老後に必要な支出を見据えた資金計画を一緒に考えてもらうことも可能です。
単に「離婚する」だけでなく、「離婚後も安心して生活できる道筋をつくる」という視点で、法的にも現実的にも支援してもらえます。
熟年離婚では、長年の結婚生活で築いた財産や年金をどう分けるかが、老後の生活を大きく左右します。
預貯金や不動産、退職金、年金分割など、対象となる財産を正確に把握し、公平に分与することが重要です。
また、財産分与や年金分割の請求には2年の時効があるため、離婚後に落ち着いてからという考えでは手遅れになるおそれもあります。
複雑な資産や制度を正しく整理するには、専門的な知識が欠かせません。熟年離婚を後悔せず、老後の安心を確保するためにも、どうぞお早めにあたらし法律事務所の弁護士へご相談ください。

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