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コラム

​離婚慰謝料と不貞行為慰謝料について

  • 本日のコラムは、私が実務をしている際に気になった、平成31年2月19日の最高裁判例について、ご紹介させていただければと思います。この裁判例は、第三者(Y)が奥さん(A)と不貞行為をしたことを理由として、旦那さん(X)がYに離婚慰謝料を請求しましたが、棄却された事例です。

  • Xが最後の不貞行為を知ったのは、平成22年5月頃でした。不貞慰謝料請求は不貞行為を知ってから3年の経過により時効消滅します※1。そのため、訴訟提起時では、不貞慰謝料請求をすることはできませんでした。

  • 一方、離婚慰謝料の時効の起算点は、昭和46年7月23日の最高裁判決※2により、離婚時とされています。本件では離婚時は平成27年2月ですので、離婚慰謝料は時効で消滅していない状況でした。そのため、Xは、Yに対し、離婚慰謝料を請求したのです。

  • ここで疑問に感じる方も多いと思いますが、不貞慰謝料と離婚慰謝料はどこが違うかです。

  • 不貞慰謝料は、第三者が配偶者の一方と肉体関係を持つことにより、夫または妻の権利※3を侵害したことによる精神的苦痛を慰藉するものです。夫または妻の権利が何か、については、学説上争いがありますが、平成8年3月26日の最高裁判決によれば、「婚姻共同生活の維持という権利または法的保護に値する利益」という表現をしています※4。

  • 離婚慰謝料は、相手方の有責行為(本件で言えば不貞行為)から離婚までの一連の経過を1個の不法行為ととらえ、離婚原因となった有責行為のみならず、離婚の結果から発生する精神的苦痛も慰藉するものとなります。※5 つまり、不定慰謝料よりも時間的に長い行為を1個の行為ととらえ、それに対して慰謝料請求するイメージになろうかと思います。

  • 従って、時効に関しても、不貞慰謝料は、最後の不貞行為を知ったときから始まりますが、離婚慰謝料は、一連の経過の最終時点、即ち、離婚時から始まることになります。

  • さて、本件では、時効消滅の問題もあり、XはYに対して、離婚慰謝料を請求したのですが、最高裁は、以下のとおり判示して、Xの請求を棄却しました※6。

​「夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者は、これにより当該夫婦の婚姻関係が破綻して離婚するに至ったとしても、当該夫婦の他方に対し、不貞行為を理由とする不法行為責任を負うべき場合があることはともかくとして、直ちに、当該夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うことはないと解される。第三者がそのことを理由とする不法行為責任を負うのは、当該第三者が、単に夫婦の一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず、当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られるというべきである」

  • 要するに、夫婦の一方(本件ではX)が、夫婦ではない第三者(本件ではY)に離婚慰謝料を求めるためには、単に第三者に不貞行為があっただけではダメで、第三者が、夫婦を離婚させようと意図して、その婚姻関係を破綻させるように干渉をするなどして、その夫婦を離婚させたことが必要だというわけです。Xとしては、Yがこのような干渉をしてきたことを具体的に主張・立証しなければならないわけですから、第三者に対する離婚慰謝料が認められるのは、かなり限定されることになります。

  • 本件の高裁判決はXの請求を一部認容していたようです。しかし、最高裁は、上記のとおり判断し、Yの不貞行為自体は認めたにもかかわらず、Xの不貞慰謝料も離婚慰謝料も認めませんでした。この結論だけみるとXに少々気の毒な気がします。最高裁がこのように、第三者に対する離婚慰謝料を限定的に判断するのは、「離婚をするのは、第三者ではなく夫婦自身であること」が理由になっています。第三者がいかに離婚を意図させようと思っても、当該夫婦で「離婚しない」という意思になれば、離婚は成立しません。そう考えると、第三者に対する離婚慰謝料が認められる場合は、第三者の行為によって、当該夫婦がやむなく離婚したといった事情が必要です。ですので、かなり限られた事例でしか、第三者に対する離婚慰謝料は認められないと言えるでしょう。

  • 蛇足になりますが、離婚訴訟は家庭裁判所の管轄で行われることになっていますが、その際に、離婚訴訟の相手方(被告)が、原告と第三者との間に不貞行為があることを理由に、離婚請求の棄却を求めると共に、第三者に対して不貞慰謝料を求めた事例に関する最高裁判決もあります(最高裁平成31年2月12日決定※7)。不貞慰謝料は、通常は簡易裁判所あるいは地方裁判所の管轄になりますので、離婚請求の管轄とは異なります。ところが最高裁は、家庭裁判所で離婚訴訟が提起されている場合は、不貞慰謝料も家庭裁判所で併合審理することができると判断しました。両請求ともに緊密な牽連関係があるとの理由からでした。

※1 判例タイムズ854号98頁
※2 最高裁判所民事判例集25巻5号805頁
※3 最高裁判所民事判例集33巻2号303頁
※4 中里和伸「不貞慰謝料請求の実務」65頁
※5 判例タイムズ1461号29頁
※6 判例タイムズ1461号31頁
※7 判例タイムズ1460号43頁

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