離婚原因

1. 離婚原因に関する争い(不貞行為、暴行、暴言、性格の不一致等)

婚姻関係にある夫婦は、協議により離婚することができます。従って、どのような理由であれ、夫婦お互いに離婚する意思があり、戸籍法の定めた離婚届を役所に提出すれば、原則としては協議離婚をすることができます。

しかしながら、①夫婦の一方が離婚に同意しない場合、②夫婦で子供の親権者をどちらにするかが決まらない場合、③慰謝料などの財産上の争いになる場合などには、離婚原因(離婚の理由)が問題になります。

●法律上の離婚原因

法律上の離婚原因には、①配偶者に不貞行為があったとき、②配偶者から悪意で遺棄されたとき、③配偶者の生死が3年以上明らかではないとき、④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき、⑤婚姻を継続し難い重大な事由があるとき、とされています。

離婚訴訟では、この5つの離婚原因があるか否かを中心に審理されます。

●不貞行為

一般的には配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいいます。

但し、不貞行為があれば必ず離婚が認められるわけではなく、例えば不貞行為の期間が短いケースの場合には、家庭裁判所はそれだけでは直ちに「不貞行為」による離婚原因があると認めない場合もあります。

従って、配偶者が浮気をした場合に必ずしも家庭裁判所で離婚原因として認められるわけではなく、「婚姻を継続し難い重大な事由」があるか否かが問題となります。

●悪意の遺棄

夫婦には同居し、互いに協力し扶助する義務があります。この義務に違反するのが悪意の遺棄です。

例えば、配偶者の一方が正当な理由がなく家庭を顧みずに別居し、生活費を送金しない事例などが「悪意の遺棄」の例に該当します。

●生死が3年以上明らかでないとき

生死が3年以上明らかではないときは、離婚調停を申し立てることなく、公示送達という方法で離婚訴訟を提起することになります。この場合には、警察署への捜索願いの受理証明等が必要になります。

なお、生死が7年以上明らかではないときは、家庭裁判所に失踪宣告の申立をすることもできます。失踪宣告の申立が認められると、死亡したものとみなされますが、離婚をしたい場合には、離婚訴訟を提起することになります。

●回復の見込みのない強度の精神病にかかったとき

回復の見込みがない強度の精神病か否かは、医学的判断によります。

但し、裁判所は、回復の見込みがない強度の精神病にかかったということだけで離婚を認めておらず、病者の今後の療養及び生活等に関し、できる限り具体的方途を講じることが必要であるとしています。

従って、配偶者が回復の見込みのない強度の精神病にかかったとしても、配偶者の離婚後の療養や生活等についての具体的な方策がなければ、裁判所は離婚を認めていません。

●婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

①配偶者に不貞行為があった場合、②配偶者によって悪意に遺棄された場合、③配偶者の生死が3年以上不明な場合、④配偶者が回復の見込みがない強度の精神病にかかった場合でなかったとしても、「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当すれば、裁判所の判決で離婚が認められます。

ここでいう「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」とは、婚姻関係が破綻していることをいい、夫婦に婚姻関係を続ける意思が無く、婚姻関係が修復不可能であることを言います。

もっとも、婚姻関係が破綻した原因が主として一方の配偶者にある場合、いわゆる有責配偶者による離婚請求の場合には、裁判所は、別居期間、未成熟子の存在、離婚により相手方配偶者が精神的・社会的・経済的に過酷な状態におかれるかどうかを判断し、離婚を認めない場合もありますので、注意が必要です。

①暴力、DV

暴力やDVは離婚する理由の典型例だと言えます。

暴力やDVは、法律では離婚原因とはされていませんが、配偶者に対する身体的な暴力、精神的な暴力や虐待などを通じて、婚姻関係が破綻していれば、家庭裁判所より「婚姻を継続し難い重大な事由」があるものと判断され、離婚原因として認められます。暴力・DVの場合には、裁判では事実関係の存否で争われる場合が多いので、診断書や日記などの証拠があった方が望ましいです。

②性格の不一致や愛情の喪失など

離婚を求める夫婦のほとんどが、性格の不一致や愛情の喪失を離婚の理由として挙げています。

ところが、裁判所は、性格の不一致や愛情の喪失のみでは「婚姻を継続し難い重大な事由」があるものとして離婚を認めていません。性格不一致や愛情の喪失を原因として婚姻関係が破綻していることが必要であり、そのような場合には裁判所も離婚を認めています。

離婚の原因は、1つとは限りません。いくつかの要因が重なり合い、お互いに違う原因を主張し合うこともあります。問題を整理し、着実に話合いを進めていくためにも、一度弁護士にご相談ください。

2.離婚原因についてのよくある質問(FAQ)

離婚原因のランキングって夫と妻で違うの?

令和4年の司法統計によると、離婚調停における夫・妻の申立ての動機については、以下の通りとなっています。

なお、申立人の言う動機のうち、主なものを3個まで挙げているため、申立総数と、動機の件数の合計は合致しません。

申立て原因 動機として挙げた人数 割合 申立て原因 動機として挙げた人数 割合
性格が合わない 9,127 32.16% 性格が合わない 16,151 21.23%
精神的に虐待する 3,234 11.40% 生活費を渡さない 12,166 15.99%
その他 3,223 11.36% 精神的に虐待する 10,975 14.43%
家族・親族と折り合いが悪い 1,849 6.52% 暴力を振るう 7,861 10.33%
異性関係 1,779 6.27% 異性関係 5,655 7.43%
浪費する 1,723 6.07% その他 4,812 6.33%
性的不調和 1,669 5.88% 不詳 3,576 4.70%
暴力を振るう 1,353 4.77% 浪費する 3,531 4.64%
同居に応じない 1,324 4.67% 性的不調和 2,733 3.59%
不詳 737 2.60% 家庭を捨てて省みない 2,585 3.40%
生活費を渡さない 711 2.51% 酒を飲み過ぎる 2,383 3.13%
病気 577 2.03% 家族・親族と折り合いが悪い 2,381 3.13%
家庭を捨てて省みない 689 2.43% 病気 637 0.84%
酒を飲み過ぎる 382 1.35% 同居に応じない 623 0.82%
申立総数 15,176 100.00% 申立総数 4,1886 100.00%
申立て原因 動機として挙げた人数 割合
性格が合わない 9,127 32.16%
精神的に虐待する 3,234 11.40%
その他 3,223 11.36%
家族・親族と折り合いが悪い 1,849 6.52%
異性関係 1,779 6.27%
浪費する 1,723 6.07%
性的不調和 1,669 5.88%
暴力を振るう 1,353 4.77%
同居に応じない 1,324 4.67%
不詳 737 2.60%
生活費を渡さない 711 2.51%
病気 577 2.03%
家庭を捨てて省みない 689 2.43%
酒を飲み過ぎる 382 1.35%
申立総数 15,176 100.00%

 

申立て原因 動機として挙げた人数 割合
性格が合わない 16,151 21.23%
生活費を渡さない 12,166 15.99%
精神的に虐待する 10,975 14.43%
暴力を振るう 7,861 10.33%
異性関係 5,655 7.43%
その他 4,812 6.33%
不詳 3,576 4.70%
浪費する 3,531 4.64%
性的不調和 2,733 3.59%
家庭を捨てて省みない 2,585 3.40%
酒を飲み過ぎる 2,383 3.13%
家族・親族と折り合いが悪い 2,381 3.13%
病気 637 0.84%
同居に応じない 623 0.82%
申立総数 4,1886 100.00%

【出典】「令和4年司法統計年報(家事編)第19表 婚姻関係事件数ー申立ての動機別申立人別ー全家庭裁判所」|裁判所

ご覧の通り、離婚を申し立てた妻も夫も、「性格が合わない」を調停申立ての原因として挙げているのが最も多く、夫の3割以上、妻の2割以上が原因として挙げています。

また、「精神的に虐待する」、「異性関係」を申立て原因としているのは、夫・妻にかかわらず多くなっています。

一方で、夫は、「家族・親族と折り合いが悪い」、「浪費する」を上位に挙げており、妻は、「生活費を渡さない」、「暴力を振るう」を上位に挙げているのが分かります。

慰謝料が認められる離婚原因にはどんなものがある?

離婚したとしても、常に慰謝料を請求できるわけではなく、慰謝料を請求できる主な離婚原因には、以下のものがあります。

  • 不貞行為(不倫・浮気)
  • DV
  • 悪意の遺棄(正当な理由なく生活費を支払わない、家事・育児の放棄、無断での別居・長期外出など)
  • セックスレス
  • モラハラ
  • 過度の借金や浪費

慰謝料は、離婚原因や行為の悪質性によって変わりますが、離婚による慰謝料の一般的な相場は、300万円以内になることが多いでしょう。

家庭内別居は離婚原因として認めてもらえるの?

前述した通り、協議による離婚であれば、原因が家庭内別居であっても、夫婦がお互いに離婚する意思を持ち、離婚届を役所に提出すれば離婚は成立します。

しかし、家庭内別居のみを原因として裁判所に離婚を認めてもらうことは、難しく、その他の事情も勘案して「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するか否か裁判所が判断することになります。

このように、裁判所で離婚を認めてもらえるかどうかは、状況に沿った判断が必要になります。

離婚は、今までの生活が一変する大きな決断となります。当事務所では、離婚したほうがいいのかを含めてご相談いただけます。新たな一歩を踏み出すために、ぜひご相談ください。

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