公開日: 2022年10月28日

取引先が代金を支払わないときは?未払い金の回収方法

「取引先から売掛金の支払いがない」、長期間滞納となっている未収金がある」など、取引先からの債権回収でお悩みの経営者の方も少なくないでしょう。

このような未払い金がある場合には、取引先の業績悪化などによって支払いを受けることができず、連鎖倒産などのリスクも生じてしまいます。そのため、迅速かつ適切な対応が求められることになります。

今回は、取引先が代金を支払わないときの債権回収の方法とその注意点について解説します。

1.売掛金・未収金を回収する方法

未回収の売掛金や未収金を回収する方法としては、以下の方法が挙げられます。

1-1.電話や面会での交渉

支払いが遅れているという場合には、取引先が単に支払期日を忘れているだけということもあります。まずは電話や面会など直接取引先とコンタクトを取って支払いを求めていきましょう。

取引先に支払いの意思および能力がある場合には、この方法で債権回収ができるかもしれません。

1-2.内容証明郵便での督促

電話や面会をしても支払いに応じてくれないという場合には、内容証明郵便を利用して書面によって支払いの催促を行います。

内容証明郵便は、相手に送付した文書の内容を客観的に証明するための手段ですので、それ自体には支払いを強制する効果はありませんが、相手に「支払わなければならない」というプレッシャーを与えることができます。

1-3.相殺による回収

売掛金を滞納している取引先に対して、買掛金を有している場合には、未払いの売掛金と買掛金を相殺することによって事実上債権回収を行うことができます。

ただし、相殺の対象はあくまでも対当額の部分に限られますので、売掛金が買掛金を上回っている場合には、相殺できない部分について別途債権回収の手段を講じなければなりません。

1-4.裁判手続き

交渉では債権回収が難しいという場合には、裁判所の法的手続きを利用して債権回収を行っていくことになります。
裁判所の法的手続きを利用した債権回収の代表的な方法としては、以下のものが挙げられます。

①民事調停

当事者同士の話し合いによってトラブルの解決を図る手続きです。裁判所の調停委員が間に入って話し合いを進めてくれますので、当事者だけで話をするよりもスムーズな解決が期待できる手続きです。

ただし、あくまでも話し合いの手続きですので、取引先が調停に出席しない場合や合意が得られない場合には、調停は不成立となってしまいます。

②支払督促

簡易裁判所の書記官が債務者に対して支払いを求める制度のことをいいます。
書記官によって発付された支払督促によっても、お金の支払いをせず、異議申立てもしない場合には、支払督促に対する仮執行宣言の発付を受けることによって、強制執行の手続きをとることが可能になります。

支払督促は、簡単な書面審査のみで行われる手続きですので、特別な知識がなくても申立てすることができます。しかし、相手方から異議の申し立てがあった場合には通常訴訟に移行しますので、取引先の態度を見極めた上で手続きを選択する必要があります。

③少額訴訟

60万円以下の金銭の支払いを求める場合に限って利用することができる簡易裁判所の手続きです。原則として1回の期日で審理を終えることになっていますので、通常訴訟に比べて迅速な解決が期待できる手続きです。

ただし、被告が少額訴訟による審理に反対する場合には、通常訴訟に移行しますので、支払督促と同様に取引先の態度を見極めた上での手続き選択が重要となります。

④通常訴訟

請求額が140万円以下の場合には簡易裁判所に、140万円を超える場合には地方裁判所に訴訟を提起して、未払いの売掛金などの請求をしていきます。

通常訴訟では、原告において、証拠に基づき売掛金の存在などを立証していかなければなりません。訴訟手続きを適切に進めていくためには法的知識が不可欠となりますので、弁護士のサポートを受けながら進めていくようにしましょう。

1-5.強制執行

支払督促、少額訴訟、通常訴訟によって債務名義を取得したにもかかわらず、取引先から支払いがないという場合には、強制執行の手続きを行います。
強制執行の手続きでは、取引先の財産を差押えた上で、その財産から債権を回収することができます。

2.売掛金・未収金の回収をする場合の注意点

未回収の売掛金や未収金の回収をする場合には、以下の点に注意が必要です。

2-1.取引先の与信管理を徹底する

売掛金回収や未払金回収をするためには時間と費用がかかりますので、まずは未払いの債権が生じないようにするための対策が必要となります。
その対策の1つが取引先の与信管理の徹底です。

取引を開始する段階で、取引先の経営状況や資産状態などをしっかりと調査することは当然ですが、その後経営状況は変化していきますので、取引開始後であっても定期的に取引先の与信調査を行うことが大切です。

2-2.取引先への連絡をこまめに行う

売掛金の滞納が生じても何の連絡もしないと、取引先からは「支払いが遅れても大丈夫な会社だ」と判断されてしまい、支払いの優先度が低くなるおそれがあります。

このような事態にならないようにするためにも、取引先への連絡はこまめに行い、支払いが滞った場合にはすぐに支払いの催促をするようにしましょう。

2-3.迅速な対応が肝心

未払いの売掛金や未収金が発生した場合には、そのまま放置するのではなく迅速に債権回収に着手することが大切です。

債権には時効がありますので、長期間債権回収を放置していると時効によって権利が消滅してしまうおそれがあります。また、時効成立前であっても取引先が倒産してしまっては、債権回収が困難になってしまいます。

早期に債権回収に着手することによって、債権回収を実現することができる可能性が高くなりますので、迅速な対応を心がけるようにしましょう。

3.売掛金・未収金の回収を放置することによるリスク

債権回収を速やかに行わないで、取引先による代金の未払いなどを放置していると、以下のようなリスクが生じます。

3-1.資金繰りの悪化

売掛金・未収金の回収を放置していると、本来手元にあるはずの現金がない状態となります。未回収の売掛金の金額によっては、資金繰りが悪化してしまい、別の業者への支払いや従業員への給料の支払いが滞るリスクがあります。

3-2.消滅時効による回収不能

先述の通り、売掛金を未回収のまま長期間放置していると、時効の成立によって売掛金の回収ができなくなってしまうリスクがあります。

売掛金の時効期間は、権利を行使することができることを知ったときから5年で時効になります。売掛金の管理をしっかりと行い、回収不能になる前に早めに対策を講じなければなりません。

3-3.倒産のリスク

業績の悪化により売掛金の支払いが滞っているという場合には、取引先の倒産のリスクもあります。
取引先が倒産をしてしまうと、未払いの売掛金の回収を受けることは難しくなりますので、滞納している売掛金や未収金の金額によっては、自社のキャッシュフローも大幅に悪化することになります。

自社のキャッシュフローが悪化すると取引先だけでなく自社の倒産リスクも高まりますので、出来る限り早めに債権回収に着手することが大切です。

4.未払い金の回収についてのよくある質問(FAQ)

未払い金を回収する権利の消滅時効成立を防ぐ方法は?

時効の成立を防ぐには、「時効の完成猶予」と「時効の更新」の2つの方法があります。

「時効の完成猶予」事由が発生すると、その間時効のカウントがストップし、当該事由が終了すると、ストップしたところから時効のカウントが再び始まります。

これに対して「時効の更新」は、更新事由の発生により、時効をリセットし、もう一度ゼロから時効のカウントを始めることを指します。

例えば、内容証明郵便での督促や、調停申立や訴訟提起により、時効の完成が猶予されることになります。

また、電話や面会で交渉する際、債務者が未払金があることを認めれば、時効の更新にあたるため、念のため書面にしておくといいでしょう。

交渉が上手くいかず長期化し、時効が完成しそうな場合には、民法で新設された「協議を行う旨の合意による時効の完成猶予」(民法151条1項)を使用することで、時効の完成を防ぐことができます。

詳しくは、弁護士にご相談ください。

未払い金に遅延損害金を請求することはできる?

売掛金の支払いが遅れた場合には、支払期日の翌日から遅延損害金が発生します。

遅延損害金の具体的な利率は、取引先との当事者間で取り決めがあれば、その利率(約定利率)で、特に約定利率の取り決めがない場合には、法定利率で請求することができます。現在の法定利率は3%で(民法404条2項)、3年ごとに見直されることになっています(同法同条3項)。

また、遅延損害金の発生後、1年を経過すると利息を元本に組み入れることができ(同法405条)、その利息も含めてさらに利息が発生することになります。

未払い金を回収できないまま自己破産されたら債権はどうなるの?

債務者が、自己破産を申し立て、認められると債務が免除されます。平たく言えば、借金を返済することを免除されるのです。

破産者に財産がある場合には、債権額に応じて分配されますが、未払金全額の回収には程遠いことが多いでしょう。

未払金が回収不可能な場合は、損金処理をして納税額を軽減するのも一つの方法です。

5.取引先からの債権回収は弁護士に相談を

取引先からの債権回収をお考えの方は、弁護士に相談をすることをおすすめします。

弁護士に債権回収を依頼した場合には、弁護士が窓口となって取引先との交渉を行います。また、内容証明郵便を送付する場合も代理人として弁護士の名前が表示されます。

弁護士が交渉を担当していることを取引先が知れば、相手もこのまま放置していると訴訟に至るリスクを強く認識することになりますので、支払いに応じてくれる可能性が高くなります。

また、債権回収の方法には、裁判外の方法や裁判所を利用した法的手続きなどさまざまな方法があります。どのような債権回収の手段が適切であるのかは、相手方の態度や資力などによって異なってきますので、状況に応じた適切な債権回収方法を選択することが大切です。

弁護士であれば、個別具体的な状況を踏まえて最適な債権回収の方法を提案することができますので、それによって、迅速な債権回収を実現することができます。

なお、迅速な債権回収を実現するためには、売掛金の滞納が生じた段階で弁護士に相談をするのではなく、普段から相談をすることができる顧問弁護士を利用することがおすすめです。

顧問弁護士を利用していれば、売掛金の滞納が生じた場合にすぐに債権回収に着手してくれるだけでなく、必要に応じて売掛金の滞納が生じないように助言したり、契約書のチェックなどをすることもできます。

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6.まとめ

取引先が代金の支払いを滞納しているという場合には、そのまま放置するのではなく、すぐに債権回収に着手することが大切です。

債権回収の方法にはさまざまな手段がありますので、適切な手段を選択するためにも、まずはあたらし法律事務所にご相談ください。

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