公開日: 2020年06月04日

中小企業経営者の個人保証

個人保証

中小企業経営者の皆様方の中には、銀行や信用組合等からの融資に個人保証を付けているケースが多いものと思われます。

経営が順調であれば特に問題はありませんが、経営が苦境に陥った場合、この個人保証により個人の財産から債権の回収が図られる恐れがあり、経営者が個人財産で支払いきれずに破産申立てをせざるを得ない場合もでてきます。

他にも、中小企業の個人保証は、新規事業、早期の事業再生、円滑な事業承継の妨げになっているとも言われています。

このような個人保証の弊害を回避するための手段として「経営者保証に関するガイドライン」があります。

このコラムでは、「経営者保証に関するガイドライン」という、中小企業団体と金融機関団体共通のルールについてご紹介いたします。

1.個人保証の問題点

経営への規律付けや信用補完として資金調達の円滑化に寄与している個人保証ですが、以下のような問題点があると指摘されています。

1-1.個人の財産から債権の回収が図られる

個人保証により、経営者個人は会社の「連帯保証人」となります。

企業の経営が順調であれば個人保証をしていても特に問題は生じませんが、企業の経営が悪化して金融機関への返済が滞った場合に問題が顕在化します。

主債務者の債務を連帯して保証している経営者個人は、債権者から支払いを求められた場合には、その債務を支払わなければなりません。

しかし、中小企業の借入金債務額は非常に大きいため、個人の財産だけでは支払いをすることが困難です。
個人の財産から返済をすることができないという場合には、経営者個人が自己破産をしなければならないというリスクが生じます。

1-2.事業を簡単にやめることができない

経営状態が悪化した場合、会社の資産を売却して事業をやめることも考えられます。

しかし、会社の債務を個人保証している場合には、事業をやめたとしても会社の債務を経営者個人が負担しなければなりませんので、返済の目途が立たなければ容易に事業をやめることができません。

個人保証をしていると、採算性の悪い事業であっても継続を強いられるという問題があります。

1-3.円滑な事業承継の妨げになるおそれ

経営者が高齢になってくると、後継者に会社の事業を譲ることを検討すると思います。

個人保証がある場合には、事業承継の際に個人保証の対象者も変更することになりますが、後継者が個人保証を嫌がると円滑な事業承継が困難になるおそれがあります。

また、経営者が死亡して相続が発生した場合にも、保証債務は相続人に相続されることになりますので、相続人に対して過大な負担を負わせることにもなりかねません。

2.「経営者保証に関するガイドライン」適用のメリット

経営者による個人保証は、資金調達の円滑化を図ることができるというメリットがある反面、上記で指摘したような問題点がありました。

このような問題点を受けて、できる限り経営者による個人保証を減らそうという動きが起き、平成25年12月5日、経営者保証に関するガイドライン研究会から「経営者保証に関するガイドライン」が公表され、平成26年2月1日から施行されました。

当ガイドラインは、中小企業の経営者が金融機関等と締結している個人保証について、中小企業・経営者・金融機関の自主的なルールを定めたものです。
関係者が自発的に尊重し、遵守することを期待して作成されたものであり、事実上の拘束力があります。

ガイドラインの適用を受けることによって、以下のようなメリットがあります。

2-1.経営者の個人保証が不要になる

新規に起業をしようと考えている経営者の中には、個人保証がネックになってなかなか踏み切れないという方も少なくありません。

適用が認められると、融資を受ける際に、経営者の個人保証が不要になる可能性があります。

2-2.経営者の自己破産を回避できる

経営者保証に関するガイドラインは、新規の借り入れの場面だけでなく、既存の借り入れについても適用されます。

既存の借り入れについて個人保証を解除してもらうことも可能ですので、それによって、経営者自身が自己破産をしなければならないという事態を回避することができます。

そのため、経営状態が悪化した会社であっても、個人保証を解除することによって早期に事業再生に向けて動き出すことが可能となります。

2-3.早期の決断で生活費などを残すことができる

たとえば、多額の個人保証を行っていても、早期に事業再生や廃業を決断した際には、破産時の自由財産とされている99万円については原則として経営者の手元の残すことができます。
さらに、年齢などに応じて一定期間の生活費(約100万円~360万円)を残すことができます。

また、経営者が所有する華美でない自宅についても収入に見合った分割弁済をすることを条件として残すことも可能です(例えば、時価1000万円程度の自宅なのであれば、「華美でない」ということで残せる可能性もあります)。

さらに、保証債務の履行を求められた時点の資産で返済することができない保証債務については、免除を受けることもできます。

3.適用を受けるための要件

ガイドラインの適用を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。

3-1.ガイドラインの適用対象となりうる保証契約である

①保証契約の主たる債権者が中小企業である

ガイドラインの主たる対象は、中小企業・小規模事業者です。また、個人事業主についても対象に含まれます。

もっとも、ガイドラインでは、中小企業基本法に定める中小企業に該当する法人に限定していませんので、その範囲を超える企業についても対象に含まれます。

②保証人が個人&主たる債務者である中小企業の経営者

経営者とは中小企業の代表者を指しますが、以下の人についても含まれます。

  • 実質的な経営権を有している人
  • 営業許可名義人
  • 経営者と共に事業に従事する経営者の配偶者
  • 経営者の健康上の理由のため保証人になる事業承継予定者等

③弁済について誠実であり財産状況などについて適時適切に開示していること

弁済についての誠実性や財産状況の適時適切な開示の有無については、債務不履行、財産状況等の不正確な開示の金額とその態様、私的流用の有無などを踏まえた動機の悪質性などを総合的に考慮して判断します。

④主債務者と保証人が反社会的勢力ではなく、そのおそれもない

主たる債務者と保証人が反社会的勢力でないことは、主たる債務者や保証人から提出される弁済計画や必要書類の記載内容、債権者が保有している情報などを総合的に考慮して判断します。

3-2.主たる債務者および保証人に要求される要件

①法人と経営者との関係の明確な区分・分離

事業用資産に個人資産がない、計算書類が適正に作成されているなど、法人と経営者の資産・経理が明確に分離されていることが必要です。

また、法人から役員への貸付が少ない、役員報酬や賞与が適切であることなど、法人と経営者の間の資金のやりとりが社会通念上適切な範囲を超えないようにするための体制を整備することによって、法人と個人の一体性解消に努めることも必要です。

その際には、公認会計士や税理士といった専門家による検証を実施することが望ましいとされています。

②財務基盤の強化

個人保証をしないと、主たる債務者(法人)の信用力を補完できなくなってしまいます。

よって、ガイドラインの適用により資金調達の円滑化が阻害されることのないようにするため、主たる債務者には財務状況や経営状態の改善を通じた返済能力の向上が求められます。

③財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性確保

主たる債務者は、債権者からの情報開示の要請を受けた場合には、資産・負債状況などを正確かつ丁寧に開示・説明をすることによって、経営の透明性を確保することが必要です。開示情報の信用性を向上させるという観点からは、これも外部専門家による検証が望ましいとされています。

また、開示・説明をした後に、事業計画や業績見通しなどに変動が生じた場合には、自発的な情報開示に努めることが求められます。

上記のような条件が将来にわたっても充足すると見込まれる場合は、「経営者保証に関するガイドライン」により個人保証を免れることも可能になっています。

4.まとめ

「経営者保証に関するガイドライン」は、中小企業の経営者が保証契約を新たに締結するときまたは解除するときに、会社がガイドラインの適用対象となる経営状況・体制整備が必要となります。

また、保証債務を整理する場面では、保証人の資産調査・資産の表明保証の適正性に関する確認書の作成・弁済計画案の作成等が必要となります。また弁済計画については、主たる債務や保証債務の破産手続による配当よりも多くの回収を得られる見込みがあるなど、債権者にとって経済的な合理性があることが期待されています。

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