不動産相続の基礎知識と遺産分割方法をわかりやすく解説
遺産に不動産がある場合、相続手続きで何をすれば良いのか、不動産があるときの遺産分割はどうすればいいのか、親の家を相続…[続きを読む]
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被相続人の遺産に預貯金が含まれる場合には、遺産分割においてどのように取り扱われるかご存知でしょうか。
平成28年の最高裁決定によって、預貯金が遺産分割の対象に含まれることが認められましたが、それ以前は、遺産分割の対象外とされていました。
預貯金が遺産分割の対象に含まれることになったことで、遺産分割手続きを経なければ払い戻しができないという不都合が生じることになりましたが、それについても、令和元年の相続法改正によって解消されました。
今回は、このような遺産分割における預貯金の取り扱いについて詳しく解説します。
平成28年の最高裁決定前後で、遺産分割における預貯金の取り扱いが変わることになりました。 以下では、遺産分割における預貯金の取り扱いの変遷について説明します。
遺産分割とは、相続によって共有・準共有となった被相続人の遺産を分けるための手続きです。
平成28年の最高裁決定以前は、預貯金の払戻請求権が可分債権であることから、相続の開始によって、当然に法定相続分割合で分割されて、各相続人に帰属するとされていました。
そのため、預貯金の払戻請求権は、相続人全員の共有状態にはならないため、遺産分割の対象にはならないと考えられてきました。
実際、最高裁昭和29年4月8日判決は、「相続人数人ある場合において、その相続財産中に金銭その他の可分債権あるときは、その債権は法律上当然分割され各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継するものと解するを相当とする」とし、最高裁平成16年4月20日判決も、「相続財産中に可分債権があるときは、その債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されて各共同相続人の分割単独債権となり、共有関係に立つものではないと解される」としており、可分債権である預金債権については、相続分に応じて当然分割されるものだと考えられていました。
しかし、平成28年の最高裁決定以前でも、相続人全員の同意を条件として、預貯金を遺産に含めて遺産分割を行うという扱いが行われていました。
金融機関によっては相続人全員の同意がなければ預貯金の払戻しに応じないケースがあることや、預貯金を含めた方が相続人全員の納得が得られる遺産分割案を作成できるなどの理由があったためです。
平成28年の最高裁決定において、「共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるものと解するのが相当である」と判示し、従来の最高裁判例を変更し、預金債権を遺産分割の対象に含めるとの判断を下しました。
最高裁がこのような判断をした理由としては、「具体的な遺産分割方法を決めるにあたって、預貯金を含めて考えた方が相続人間の実質的公平を図ることができること」「預貯金は、解約しない限り、残高が変動するため当然分割にはなじまないということ」が挙げられます。
平成28年の最高裁決定以後は、相続人が単独で金融機関に行き、自己の法定相続分に相当する預貯金債権の払戻しを求めたとしても応じてもらえず、必ず遺産分割手続きを経なければならなくなりました。
平成28年の最高裁決定では、普通預金債権、通常貯金債権、定期貯金債権について判断が下されましたが、定期預金・定期積金の取り扱いについては明示的な判断が下されていませんでした。
そのような状況において、平成29年4月6日の最高裁判決では、「共同相続された定期預金債権及び定期積金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないものというべきである」と判示して、平成28年の最高裁決定と同様に、定期預金・定期積金についても遺産分割の対象になることを認めました。
以下では、平成28年の最高裁決定以降に生じた不都合性を解消するために導入された預貯金の仮払い制度について説明します。
平成28年の最高裁決定を前提とすると、遺産分割協議を経ない限り預貯金の払戻しをすることができず、生活費や葬儀費用などの支払いが生じた場合などに不都合が生じることになりました。
争いのある事案では遺産分割が完了するまでには相当長期間を要するものもありますので、その間、一切払い戻しができないとなると相続人の不利益は非常に大きなものとなります。
このような不都合性を解消するために相続法改正によって新たに導入された制度が「預貯金の仮払い制度」です。 この制度は、被相続人が亡くなった後、遺産分割前に相続人が被相続人名義の預貯金の払戻しを請求することができる制度です。
これによって、生活費の支払いや葬儀費用の支払いなどの急な資金需要に対応することができるようになりました。
預貯金の仮払い制度は、あくまでも「仮に」払戻しを認める制度ですので、一定の制限があります。
預貯金の仮払い制度を利用して払戻しできる預貯金額の上限は、下記の①または②の金額のうち、いずれか低い方の金額です。
①死亡時の預貯金残高×その相続人の法定相続分×1/3 ②150万円
なお、上限額の設定は金融機関ごとになされていますので、複数の金融機関に預貯金口座を保有している場合には、金融機関ごとに預貯金の仮払い制度を利用することも可能です。
預貯金の仮払い制度を利用する際には、金融機関に対し、以下の書類を提出して預貯金の払戻しを申請します。
なお、金融機関によっては、上記書類の他にも提出を求められる書類がある場合もありますので、事前に確認しておくとよいでしょう。
預貯金を含む遺産分割の際には、相続人同士でトラブルが生じる可能性があります。 以下のような理由により、弁護士に相談をすることをおすすめします。
遺産分割を行う前提として、被相続人の遺産を調査する必要があります。これを「相続財産調査」といいます。
預貯金などの相続財産に漏れがあった場合には、漏れていた遺産の内容によっては遺産分割協議を一からやり直さなければならないこともありますので、正確な相続財産の調査が重要となります。
弁護士であれば、被相続人がどのような財産を有していたか不明な場合であっても、各機関に対して照会を行うことによって、迅速かつ正確な相続財産調査を行うことが可能です。
遺産分割をする際には、まずは、相続人全員で話し合いを行って、遺産の分割方法などを決めることになります。
しかし、当事者だけでの話し合いでは、お互いの利害を優先する結果、感情的になってしまい、冷静な話し合いができない場合があります。
しかし、弁護士が相続人の代理人として遺産分割協議に参加することによって、それまで感情的になっていた相続人も冷静に話し合いに応じてくれることがありますので、スムーズな話し合いが期待できます。
預貯金を含めた遺産は、法定相続分が決まっているため、弁護士に遺産分割を依頼しても結果は変わらないとお考えの方もいるかもしれません。
しかし、遺産分割にあたっては、遺産の評価、特別受益、寄与分などを適切に考慮することによって、有利な条件で遺産分割を成立させることが可能な場合もあります。
たとえば、遺産に不動産が含まれているような場合には、どのように評価するかによって遺産の総額が大きく変わってきます。また、生前に被相続人から多額の贈与を受けていた相続人がいる場合には、当該贈与を持ち戻しの対象にすることで他の相続人の取得分を増やすことができます。
このように、遺産分割では専門家である弁護士が介入することによって、依頼者に有利な条件を獲得することができる可能性が高まりますので、積極的に弁護士への依頼を検討するようにしましょう。
預貯金を相続人で遺産分割すると、1円以下の端数が出るのが通常です。
端数については、相続人間で合意ができれば、どういった取り決めでもかまいません。
相続開始の前後を問わず、被相続人の預貯金に使途不明の引き落としがあるのが発覚するのは、遺産分割協議の場が多いと考えられます。
もし、疑義を持たれた相続人が使い込みを認めれば、使い込まれた額を含めて遺産分割することは可能です(民法906条の2第1項)。ただし、使い込みを認める相続人は稀でしょう。
生前の使途不明金が被相続人からの贈与だと主張すれば、特別受益となる可能性があり、遺産分割調停などで解決すべきです。
医療費や生活費など被相続人のために使ったと主張すれば、不法行為に基づく損害賠償請求や、不当利得返還請求などの裁判を提起してその主張を覆す必要があります。
相続開始後に行われた使い込みも、同じく不法行為に基づく損害賠償請求や、不当利得返還請求などの裁判を提起しなければなりません。
この通り遺産の使い込みについては、裁判によらなければならないことも多く、詳しくは弁護士に相談することをお勧めします。
平成28年の最高裁決定以降は、遺産分割前は、自己の法定相続分に相当する預貯金についても払戻しを請求することができなくなりました。
被相続人の死後、生活費や葬儀費用でお金が必要になったという場合には、相続法改正によって新たに導入された預貯金の仮払い制度を利用してみると良いでしょう。
遺産分割においては、預貯金の取扱いも問題になりますが、不動産など、様々な財産がかかわってきます。
遺産分割に際しては、相続人同士で揉めてしまうことも多いです。スムーズな話し合いや、有利な条件での遺産分割を行うためにも、積極的に弁護士に相談することをお勧めします。
相続でお困りのことがありましたら、あたらし法律事務所までご相談ください。
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