税法研究会その2

5月25日金曜日に3回目の税法研究会がありました。取り上げた判例は、最高裁昭和60年3月27日大法廷判決(サラリーマン税金訴訟)、最高裁昭和50年5月27日第三小法廷判決(財産分与課税事件)、最高裁平成16年12月24日(興銀事件、貸し倒れの判断基準)の3つです。

 今回はサラリーマン税金訴訟について紹介したいと思います。

 事案としては、大学教授であるXが給与所得者であったが、一定以上の給与収入がある者は、確定申告をしなければならないのにそれを怠り、所轄税務署長Y から追加の納税額の決定処分と無申告加算税を課せられました、これに対しXは、Yの処分の取り消しを求めて出訴した事案です。

 争点としては①所得税法が事業所得者には必要経費の控除を認めながら、給与所得者にはそれを認めていないこと②給与所得者と事業所得者では所得税の捕捉率が異なり、給与所得者は不利益を被っていること③事業所得については合理的な理由のない各種の特別措置が設けられていることから旧所得税法における給与所得に対する課税は不公平なのではないかという点です。

 ①について、勤務上必要な施設器具備品等は使用者が負担していることが通例であることや、事業に関連する費用とプライベートな費用の区別は難しいこと、給与所得者は数が多く、必要経費の実額控除の認定を行うことは困難であること、職務に関し必要な経費や現物給付はおおむね非課税とされていることなどから、所得者には、実際にかかった経費ではなく、概算で控除を行ったとしても違憲ではないとされました。

 ②について、税金の捕捉率の問題は、税務行政の適正な執行によって補足されるべきであるとされ、③については、事業所得者に対する租税優遇措置については、当該優遇措置自体の有効性に問題が生じるのみで、本件で問題となる給与所得者に対する課税規定を違憲無効なものにすることにはならないと判断されました。

 この事件は、20年にも亘り争われた事件です。伊藤正巳裁判官の補足意見から、原告が給与所得控除の金額を上回る必要経費を立証したような場合には、結論が変わったかもしれないとされています。20年も争っていて、原告が具体的に数字を出して主張していかなかったのは少しもったいない話かと思います。ただ、給与所得者は、必要な費用を使用者から支出してもらっていることは多く、なかなか、給与所得控除の額を必要経費が上回るという状況は考えにくいのかもしれません。

 この判例が話題になり、給与所得者の実額控除の代わりに「特定支出控除」という制度(所得税法57条の2)ができましたが、適用例は極めて少ないようです。

この規定の中では、通勤の費用や書籍代などについて規定されていますが、職務に必要であれば通常使用者が負担するものなので、この規定を利用することは考えにくいのだと思います。また、一般の人が租税法の条文と通達等を参照して権利を主張をすることは難しいと予想されます。

ただ、給与所得者の方でも、事業に必要な経費が多くかかっている場合は、特定支出控除を検討してみてはいかがでしょうか。

 

 

代表弁護士 新 有道
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